理想の睡眠時間は?
人間は、1日何時間、眠れば良いのか?




「人間にとっての、最も良い1日の睡眠時間」は、
「8時間」では無い?

「理想の睡眠時間は、8時間」というのは、
昔からよく言われている話ではあるのですが、
これは、正しいとは言えないようです――
国立精神・神経医療研究センターの三島和夫氏は、こう述べています。

「人が必要とする睡眠は、人それぞれなのに、
日本では、どこからきたのか、
『8時間睡眠が、良い睡眠』のように言われています。
でも『8時間』というのは、
働き盛りの30代〜50代の人たちの必要な睡眠時間からすると、 長すぎなんです。
60代・70代だと、もう6時間くらいしか必要なくなる。
長く寝すぎると、かえって調子が悪くなる事もあって、
『睡眠酩酊』と呼ばれます。」
(ナショナル ジオグラフィック)

また、「アステラス製薬株式会社」と「サノフィ株式会社」のサイトである
「快眠推進倶楽部」には、次のような記述があります。

「よく、理想の睡眠時間として『1日8時間』という数字があげられますが、
これは医学的根拠があるわけではなく、
『多くの人の睡眠時間が、6時間〜9時間の間』という統計から出された
『平均的な睡眠時間』にすぎません。」
(快眠推進倶楽部)

さらに、睡眠研究の第一人者であるDaniel Kripke教授によれば、
“『8時間睡眠が、理想的である』という事を裏付ける証拠は、
これまでに一切、見つかっていない”という事です。
(ライフハッカー)

こうして、様々な専門的な意見を読んでいくと、
「最適な睡眠時間は、8時間」という説は、 単なる神話にすぎないのかもしれません。

では、“最適な睡眠時間は、1日8時間ではない”とするならば、
「人間にとっての、理想の睡眠時間」というのは、
1日何時間くらいなのでしょうか?

最も効率的に働いたり、勉強したりする事ができる睡眠時間、
最も健康に良い睡眠時間――
それは、1日何時間くらいなのでしょうか?


「睡眠時間」に関する、世界中の研究結果によると……

「睡眠時間」については、
世界中で、さまざまな調査・研究が行なわれています。
それらの研究結果を読んでいくと、
「理想の睡眠時間は、1日7時間」という結論を、 導き出せるようにも思えてきます。

でも、ここでは、早計に結論を出すのではなく、
まずは、それらの研究結果を、1つ1つ見ていきたいと思います。


カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究

カリフォルニア大学サンディエゴ校のダニエル・クリプペ博士が、
100万人以上を対象に、
「睡眠時間」と「寿命」の関係についての調査を、1980年代に行ないました。

その調査結果によると、最も死亡率が低かったのは、
「1日に6.5時間〜7.5時間、寝ている人たち」でした。

そして、「それ以上の時間、寝ている人」および 「それ以下の時間しか、寝ていない人」は、
寿命が短くなる傾向にありました。

このうち、「長い時間、寝ている人」の方が、問題がありました。
というのも、「6.5時間〜7.5時間、寝ている人」に比べると、
「7.5時間〜8.5時間以上も、寝ている人」は、
死亡率が、20%も上昇したからです。

こうした研究結果から、
この研究を行なったダニエル・クリプペ博士は、次のように述べています。

「睡眠は、食欲と似ている。
欲望にまかせて、ものを食べると、 食べすぎて健康を害する。
睡眠も、眠たいからといって、いつまでも寝ていると、体に良くない。」
(All About)


「イギリスのウォリック大学」と「イタリアのフェデリコ2世大学」が、
共同で行なった研究

この研究では、約138万人の10年間にわたるデータが解析され、
11万件以上の「死亡」と「習慣的な睡眠時間」との関連が調査されました。

その研究結果によれば、「1日6時間〜8時間、眠る人」に比べると、
「1日の睡眠時間が、6時間に満たない人」は、
早死する確率が、12%高くなるという事です。

そしてウォリック大学のFrancesco Cappuccio教授は、こう述べています。

「健康に良いのは、1晩に『6時間〜8時間』眠ることだ。
『睡眠時間が短い人』は、
肥満、高血圧、高コレステロール、2型糖尿病が、多い傾向にある。」
(糖尿病ネットワーク)


アメリカの研究者による研究

アメリカの研究者が、70才以上の元女性看護師1万5000人に対して、
睡眠についての追跡調査を、実施しました。

その調査結果によれば、「毎日7時間、眠る人」に比べると、
「睡眠時間が、5時間未満の人」および 「睡眠時間が、9時間超の人」は、
認知能力が低い傾向にありました。

この事から、「睡眠は、少なすぎても多すぎても、
大脳の老化を、2年ほど早める」という研究結果を、
アメリカの研究者が、アルツハイマー型認知症に関する学会で、公表しました。
(XINHUA.JP)


「睡眠時間が、7時間以下」の危険性

日本の研究によると、「睡眠時間が、7時間以下の人」は、
乳がんのリスクが、62%も高まってしまうという事です。
(マイナビウーマン)


名古屋大学の研究

名古屋大学の玉腰暁子先生が、40才〜79才の男女約10万人を、
10年間にわたって、追跡調査しました。

その結果、死亡率が最も低かったのは、
男女ともに、睡眠時間が「7時間」の人たちでした。
そして「睡眠時間が、7時間より短い人」および
「睡眠時間が、7時間より長い人」ともに、死亡率が高くなる傾向にありました。
(All About)


人間にとっての、理想の睡眠時間は、1日7時間??

さて、ここまで、「睡眠時間」についての、
さまざまな研究・調査結果を見てきました。

世界中で行なわれている研究結果について、こうして1つ1つ読んでいくと、
理想の睡眠時間とは、1日7時間くらいなのではないだろうか――
そんなふうにも思えてきます。

人間にとっての、最適な睡眠時間は、1日7時間!

……と、そのように、ここで結論づけてしまいたいのですが、
残念ながら、そんな簡単に、単純な結論を出すことは出来ないようです。

というのも、フジテレビ系の番組「ホンマでっか!?TV」に、よく出演している
認知脳科学の専門家・澤口俊之さんが、次のように述べているからです。

「とても身近な問題で、多くの研究が行なわれているにもかかわらず、
まだまだ謎が多いのが『睡眠』のメカニズムです。
『睡眠時間は、1日7時間が理想的』という話を、よく耳にしますが、
実際に本当なのかどうかは難しいところです。

その理由のひとつに『調べ方』の問題があります。
睡眠に関する調査は、アンケートや質問形式で行なわれる事が多いため、
回答は『自己申告』になります。
しかし、本当に睡眠状態にあるかどうかは、
脳波を測定してみないと分からないものです。

たとえば、自己申告の睡眠時間が8時間なのに、
脳科学的に調べた睡眠時間は、6時間もしくは7時間だったというケースは、
多く見られます。
また、脳科学的な理想の睡眠時間は、
『6時間〜6時間半』というデータもあります。

『7時間が理想的』というのは、目安でしかありません。
個人差もあり、『6時間が理想的な人』もいれば、 『9時間が良い人』もいます。」

このように、澤口俊之さんは述べながらも、 次のように結論づけています。

「さまざまな研究結果から、
適切な睡眠時間は『6時間〜9時間』の間だと、 みなしていいでしょう。
『この範囲より、短すぎる睡眠』も『長すぎる睡眠』も共に、
『うつ病』になる危険性を高める事が、分かっています。」
(NEWSポストセブン)

また、「アステラス製薬株式会社」と「サノフィ株式会社」のサイトである
「快眠推進倶楽部」には、次のように書かれています。

「睡眠時間には、かなりの個人差があり、
平均睡眠時間より短いからといって、
不健康な眠りというわけでも、不眠というわけでもなく、
『3時間〜4時間の睡眠で十分な人』もいれば、
『9時間以上の睡眠が必要な人』もいます。

基本的には、日中眠気がなく、
きちんと活動していくのに十分な睡眠時間が確保されていれば、
何時間でもかまわない、と言えます。

睡眠は、『時間』よりも『質』の方が重要。
質のよい睡眠とは、目覚めがスッキリとしていて、
ぐっすり眠ったという満足感が得られる眠りの事です。」
(快眠推進倶楽部)


【参考文献】
理想は8時間睡眠も、ウソだった!(ナショナル ジオグラフィック)
睡眠時間は、8時間必要?(快眠推進倶楽部)
「8時間、寝るのがベスト」は、忘れよう(ライフハッカー)
寝過ぎは逆効果? 長生きできる最適の睡眠時間とは?(All About)
短すぎる睡眠時間は、糖尿病の危険を高める(糖尿病ネットワーク)
「眠り過ぎ」も「睡眠不足」もNG(XINHUA.JP)
7時間以上の睡眠が、必要な理由と効果(マイナビウーマン)
適切な睡眠は、6時間〜9時間。
短すぎても長すぎても、「うつ病」のリスク(NEWSポストセブン)




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